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仕事をして!
倉田 芳佳との一緒の仕事も息が合い始めた。
羨ましいとか、あなたになりたいという、悪魔のささやきの様な言葉が頭から取れた倉田は前以上に水菜に信頼を置き、素直に助けを求める様になり、本来の真面目な性格も手伝って水菜の仕事を吸収する様に覚えていった。
「石原さん、Bチーム、1週間で終わる予定だそうです。」
昼前にフロアに進行状況を聞きに行っていた倉田が、嬉しそうに戻って来て報告した。
「そう、良かった。社長のスケジュールに余裕が出来るわね。
その分、ゲーム開発に時間を当てられるわ。
フロアに聞きに行くのは平気になった?」
「タイミングが難しいですね?一応、私、プログラミングは出来るので、後ろからバレない様に様子を見て、大変そうだったら後にする事にしてます。
主婦のみなさんには意味不明な質問で捕まります。あれ困ります。」
「ああ……。確かにねぇ。私もお子さんは?って子供の話で捕まって、ついつい…私も話してしまって…。反省して、時計を見て社長の時間が!って言う事にしてるの。時間がないとさすがに解放してくれる。」
「時計、ですか。腕時計、してた方がいいですか?」
腕時計をしていない倉田は水菜の腕時計を見ていう。
「ううん、フロアにも壁時計あるし。あ、時間と言えばね?フロアに聞きに行く時、時間決めておくと意外にいいよ?」
「時間をですか?」
「うん。もちろん、こっちの仕事の都合もあるから毎日、同じ時間とはいかないけど、大体、11時頃に私はしてた。相手もそろそろ来るなぁとか思ってくれるし、来たら、そろそろ11時ですかぁ、とか言われるし、急に顔出されるよりは心構えも出来るみたい。」
「……もう、石原さん!そういうのを引き継いで下さいよぉ〜。」
項垂れながらも笑って倉田は言う。
「え?…そう?ごめん。いつも同じ時間は無理だし、時間決めると忙しくなっちゃうと思って……。」
「石原さんも、普通の人ですね?」
笑って倉田が言う。
「普通の…って…。今まで何だと思ってたの?」
呆然と水菜は聞いたが、倉田は笑うだけだった。
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