第二十三話 再び魔導ギルドへ

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第二十三話 再び魔導ギルドへ

「し、死ぬかと思った……」 「大丈夫ですか?」  倒れて更に泡まで吹いていたのでメイに言って回復してもらった。メイドロイドのメイはいざという時の為に回復魔法の術式も扱えるようにしてある。しかも魔導書などを読めば自ら理解して覚えるという学習機能付きだ。 「それにしても驚いたぜ。まさかあんな強烈な魔法を使うとはな。転移魔法を使っていたのだからもっと警戒すべきだったが、俺としたことが魔導具で戦うなどという話を真に受けてしまった……」 「いや、お前の方こそ何を言っている? あれはまさしく魔導具だぞ?」 「坊主、世間では杖を使って魔法を行使するのを魔導具で戦ったとは見ないんだよ」 「だからこれは杖ではない。リボルバーという魔導具だ。お前が言っている転移魔法も魔導具だ」 「わかったわかった」  こやつ、さては私が使ったのをあくまで魔法ということにして、自分の知っている情報を伏せる気だな。  むぅ、冒険者にしては中々の口の固さだな。 「さて、とにかくお前のことはよく理解出来たぜ。大体戦ってみればそいつがどんな奴か理解できるものだ。で、だ。おいお前ら!」 「ヒィ!」  そんな馬鹿な話があってたまるかと言いたいところだが、妙な誤解は解いてくれてそうだから指摘せんとこう。何かこそこそ逃げ出そうとしているあのチンピラ冒険者を怒鳴って止めたし。 「はは、あ、兄貴残念でしたね」 「俺はテメェらの兄貴じゃねぇ! それとだ、お前ら今ならまだ許してやるから本当の事を言え」  立ち上がり、一歩一歩近づきながら、拳を鳴らし問い詰める。これはもうほぼ脅しだな。 「す、すみませんハザンさん! 本当は先に仕掛けたのは俺たちなんです!」 「巨乳でエロいメイド連れた生意気なガキなんてちょっと脅せばすぐ言うことを聞くと思って恐喝したんです!」 「金も女も手に入るぜヒャッハーとか思っちゃったんです!」  お前ら素直に白状しすぎだろ。自白用の魔導具を使ったがごとくべらべら喋ってるぞ。 「なるほど、よくわかった。よく正直ありのままに話してくれたな」 「そ、それじゃあ許してくれるんですね!」  ガバっと揃って頭を上げて、希望の満ちた目でハザンを見た連中だが。 「あん? 許すわけねぇだろうがこのど腐れ外道ともが!」 「ひっ、そんな話がちが、ギャァアアアァアアァアア!」  そして3人の馬鹿は結果的にハザンの手で制裁された。全く結局私たちにやられた時より酷いことになってるではないか。 「本当に申し訳なかった。このゴミどもはギルドに報告して除名させる」 「まぁ、そこは任せるさ。こっちは済んだ話だ」  誤解が解けたかと思えば、かなりの低姿勢で謝罪してきた。最初はなんて脳筋なやつだと思ったが、以外にも最低限の良識は備わっていたようだ。 「しかし、それでは俺の気が済まない。そうだ! 俺はこれでもBランクの冒険者だ。だから俺に協力出来ることがあれば何でも言ってくれ! 何でも手伝うぞ!」 「あぁ、うん、その気持ちだけありがたく受け取っておくよ」  まさかこんな形で冒険者と繋がりが出来るとは。ギルドには全くいい感情がないが、本人が気がすまないと言うなら何が幸いするかわからないから素直に聞いておくとしよう。 「それじゃあ俺はこの馬鹿共を持ってくとするか。それじゃあな!」  そしてハザンはあのチンピラ3人を担いで去っていった。メイほどでないにしても中々のパワーだな。 「さて、妙なところで時間を食ってしまったが行くとするか」 「はいご主人様」 ◇◆◇ 「うん、なんだ貴様らは?」 「あ、昨日の……」    私たちが魔導ギルドへ顔を出すとなんと先客がいた。ふむ、てっきり開店休業状態なのかと思ったが、来客があることもあったのか。  しかしよく考えたら当然と言えるか。客もいないのにギルドが維持できるわけもない。 「少しここに用事があったのだが、私は後で構わないからどうぞ話を続けてくれ」 「ふん、妙なガキだな。言っておくがここに何か買いに来たなら無駄だぞ? 時間の無駄だ」  なんだこの男は? てっきりギルドの客かと思ったが、それにしてはあまりに口が悪い。 「すみません、少しだけお待ち下さい。え~と、それで採取した物はいかがでしたか?」 「そうだったな。ギルドで査定したが、アロイ草はかなりひどい状態だった。あんなの普通は扱えないが、大甘にみて99本はなんとか材料になるかといったところか」 「え? 99本、ということは……」  アロイ草、採取……つまりこの男から依頼を請けてアロイ草の採取をしたということか。  アロイ草は薬の材料としては基本的な魔草だ。ある程度魔力の満ちた森によく群生する。  この手の魔草の採取は記憶では見習いの冒険者がよく請け負っていた仕事だ。    だけどそれも今は魔導ギルドが請けるようになったのか。確かに物探しは魔法や魔導具の得意としているところではあるがな。 「そう、依頼はアロイ草を100本採取してくること。だが、使い物になるのは99本だけ、つまり依頼失敗だ。違約金を支払ってもらうことになる」 「そ、そんな……」 「違約金だと?」  思わず声を漏らすと、ギロリと口の悪い男が睨んできた。耳元にだけ毛の残った中年の男だ。カエルみたいな顔をしている。 「あ、あの、なんとかなりませんか? アロイ草は500本は摘んできた筈です。なのにそんな、あと1本、なんとか……」 「悪いがこっちも規則なんでね。それは認められないのさ」 「ちょっと待て」 「……一体さっきからなんなんだお前は。関係ないなら引っ込んでてくれ!」  不機嫌そうに顔をしかめ、しっし、と手を振ってきたが、こんなものを見せられてだまってられるか。 「関係ないわけじゃないさ。私はこのギルドに所属しているわけだしな」 「……え!?」  メガネの女が驚いた。まぁ嘘だからそれもそうだろうが、とりあえずそういうことにでもしておかないと口も挟めない。 「所属だと? 貴様のようなガキがか? ははは! これはとんだお笑い草だ。なんだこのギルドは、あまりに人が集まらないからとついにこんな小生意気そうなガキまで所属させるようになったのか!」  私を指差し、小馬鹿にして笑いだした。全く、見た目が子どもというのも困ったものだ。 「いや、その、これは、え~と」 『ここはどうか話しを合わせてください』  メイがサッと彼女の横に立ち耳打ちした。戸惑っていたがとりあえず納得してくれているようで助かる。 「とにかく、違約金とは聞き捨てならない話だ。ギルドの人間として抗議させてもらう」 「は? 抗議だと? 貴様は自分の立場が判っているのか? こんな誰もやって来ないようなオンボロギルドにわざわざ冒険者ギルドから仕事を回してやってるんだぞ!」  なるほど。何か妙だと思ったが、こいつ冒険者ギルドの職員だったのか。 「それで魔草採取を請けたというわけか」 「そうだ。その依頼を達成出来なかったのだから違約金は当然だ」 「ちなみに報酬はいくらで違約金はいくらなんだ?」 「何だお前、そんなことも知らんのか?」    上から目線で私を見下ろしてくる。表情からして性格の悪さが滲み出ている男だ。 「全く仕方ない。いいか? アロイ草は1本につき銅貨1枚の仕事だ。それを最低100本採取してくるというのが依頼だったのさ」  銅貨1枚とは随分と安いな。まぁ、あの魔草はわりと簡単に手に入るがそれでもそんな馬鹿げた依頼料でよく請け負ったものだ。 「それで違約金は?」 「今回は500本持ってきたうちの401本が駄目だったからな。1本につき銀貨1枚のペナルティーだから違約金として銀貨401枚を支払って貰う必要がある」 「は?」
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