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「前島のバイト先って、大通のカフェだったよな?」
お昼休み、いつものようにまなと学食でご飯を食べていると、突然水谷くんに声を掛けられた。
「うん」
「こいつ、今日から同じところでバイト始めるみたいで」
そう言われて初めて、水谷くんの隣に立っている男の子の存在に気づいた。水谷くんと同じくらい背が高くて、なんだか近寄りがたい雰囲気を漂わせている。
「……二階堂です。よろしく」
さらさらした黒髪でキリッとした顔立ちのその男の子は、ニコリともせずにそう言うと、サッと目を逸らしてしまった。
「あ、前島です。よろしくお願いします」
そう返したけど、二階堂くんは微かに頷いただけで、そこから話が発展することはなかった。
「あの二人、一緒にいると目立つよねえ。なんか雰囲気も似てるし」
水谷くんと二階堂くんはわたしたちとは別の席に座って、時折何か話しながらご飯を食べているようだ。
「わたし、二階堂くんって初めて喋ったかも」
「夏樹くん、凛太郎よりも無口だしね。かなりイケメンだけど、みんな鑑賞用って思ってるし」
「確かに……二人が並んでるとなんかこう、オーラが」
そうそう、類友ってああいうこと言うんだよね、とまなが頷いた。
二階堂くんかぁ──綺麗な人、という印象だ。男の子に対しての評価としては、あまり相応しくないのかもしれないけど。
「さゆ、男子にあんまり興味ないもんね。まあ、素敵な大人の彼氏がいるし?」
まながふふっと笑いながらデザートのプリンをスプーンで掬う。
「最近のさゆ、さらに可愛くなったもん。今度、いろいろ話聞かせてもらわないと」
「……まなってば」
意味深な笑みを浮かべるまなに、わたしは苦笑いを返すしかない。
「そうそう、さゆって公務員講座取ってるでしょ?確か夏樹くんも取ってるはずなんだよね。話題に困ったら、その話でもしてみたら?」
無口だという二階堂くんと同じバイト先なことを心配してくれているのか、まなが思い出したようにそう提案してくれた。
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