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──Side 侑一
「わぁ、ほんとだ。めっちゃイケメン」
「……ってグループのリーダーの子に似てない?背高くてシュッとしてて、クールな感じで」
「わかる!」
「隣で教えてる女の子も可愛いよね。ここ、顔採用なのかな」
19時頃に川田とカフェに行くと、俺たちの前に並んでいる女性3人がキャッキャと楽しそうに話していた。彼女たちは別の会社の名札を下げている。
ということは、うちの会社以外でも例のバイトは有名になっているらしい。
──あの男か。……ああ、確かに。ていうか、隣で教えてる女の子って……紗友里じゃん。
「なるほどな、そういうこと。お前、可愛い奴だな」
「うるせえな、奢ってやるから黙れ」
「ついてきてやったのにそれはなくない?……なぁ、お前の彼女、なんか女っぽくなったな」
「川田、だから黙れって」
「もともと可愛かったけど、こう、さらに……」
「お次の方どうぞ。……あれ、侑一さん?」
川田が何かろくでもないことを言い出そうとしたとき、紗友里の驚いたような声が聞こえた。
前に並んでいた女性たちはとっくにレジの隣にずれていて、コーヒーができるのを待っているようだ。
「残業ですか?」
「うん。ブレンドのM2つ」
紗友里は、白のワイシャツに黒のカフェエプロンを身につけ、肩下まで伸びた髪を後ろでまとめている。何回見ても可愛いなぁと、そのにこやかな笑顔に癒されながらも──なぜか刺すような視線でこちらを見てくる「震えるレベルのイケメン」の存在が気になって仕方がない。
「二階堂くん、ブレンドM2つお願いします」
「あ、3つで」
「え?」
「香坂の分。あいつも残ってたから」
──そうだっけ。川田、よく見てるなあ。そう思いながら千円札を2枚出すと、「あ、いい。自分で払う。香坂のも」と1枚は突き返されてしまった。
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