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#11 波乱の予感***
「そういえば、来週、出張になったんだ。今回は2泊だから、いつもより長くて」
「どこ行くんですか?」
「函館。お土産買ってくるね」
昨夜は侑一さんの家に泊まって、今はバイトに行くまでの時間をゆっくりと過ごしている。
ソファの上で侑一さんに後ろからぎゅっと抱きしめられながら、いろんな話をして。気を抜いたら寝てしまいそうなくらい心地いい、そんな土曜日の昼下がりだ。
「函館、いいですね。しばらく行ってないです」
「今度一緒に行こうか?」
「ほんとですか?行きたいです!」
侑一さんと旅行──きっと楽しいだろうな。温泉とかにも行ってみたいし、飛行機でどこかに行ってみたい気もするし。
「なにニヤニヤしてるの」
「一緒に旅行したら、楽しいだろうなぁって」
「そうだね。冬、どこか行く?泊まりで」
侑一さんはそう言って、わたしの頬に軽くキスを落とした。ちらっと侑一さんの方を向くと、今度は唇に。
「……紗友里、こっち向いて」
言われた通りに身体を向けると、また唇にキスされた。角度を変えて、軽く啄ばむように何度も。
唇を離して至近距離で見つめ合って、どちらからともなくキスをして。最初は触れるだけだったものが、少しずつ深くなる。
侑一さんは右手でわたしの髪を優しく撫でながら、左手をわたしのセーターの中に少しずつ潜らせてくる。直に肌に触れてくるその感触に、思わずびくっと震えてしまった。
「ゆ、侑一さん……あの、これからバイトなので……」
「うん、知ってる。紗友里、何考えてるの?」
耳を甘噛みされて、思わず高い声が出た。これから起こることが予想できてしまって、鼓動が少しずつ速くなっていく。
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