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「取り分けてくれてありがとう。先週も思ったけど、前島さんは気が利くよね」
「いえ、そんな、全然です」
前菜のサラダを取り分けたあとにマルゲリータピザが運ばれてきて、「これは好きに取って食べていいからね」と古賀さんがすかさず言ってくれた。
「前島さん、1年目?2年目?それくらいのときって先輩方にいろいろ気も遣うよね、飲み会とか」
3年目ですと答えかけて、いや違う、社会人歴のことだ、と気付く。
──そうだ。今日、きちんと正直に言うって決めてたじゃない。今言わないと、きっとタイミングを逃してしまう。
「て言っても、俺だってまだ6年目だけどね」
「……古賀さん、あの」
よし、今だ──わたしが覚悟を決めた、そのときだった。
ギャハハハハ、とものすごい笑い声がして、わたしも古賀さんも思わず声の方向を向く。
派手な感じの男女のグループだった。たぶん、わたしと同じくらいの歳だ。
「……なんだ、びっくりした。大学生かな」
「そう……ですね……」
「大学生ってみんな楽しそうだよね。いや、何年か前まではそうだったけどね、もう全然縁のない世界だからなぁ」
でも、前島さんはまだ卒業してちょっとしか経ってないか、と古賀さんが続けたので、わたしは思わず言葉に詰まってしまう。
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