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──Side 侑一
「今日は本当にありがとうございました。無事に家に着きました。楽しかったです。ご飯もおいしかったです、ご馳走様でした」
最寄りの地下鉄駅から自宅のマンションまでの道をゆっくり歩いていると、ジーンズのポケットに入れているスマホが震えた。
前島さんからの返信だった。おなじみのウサギが「ありがとう!」とぴょんぴょん跳ねるスタンプ付きだ。
「ほんと、かわいーなぁ……」
思わずぽつりと呟く。メッセージ、既読がついてから返信までにしばらく間が空いていた。これを送るのに、どれくらい考えたんだろう。──そう思うと、胸の奥がくすぐったくなるようなむず痒いような、そんな感覚に襲われる。
最初は前島さんの見た目に惹かれたものの、一緒にいるうちに性格がすごくいい子だということに気付いた。
きっと彼女は、初対面の人と話すことが得意ではないのだろうと思う。
そんな中でも一生懸命話してくれて、笑ってくれて、食事に付き合ってくれた。ましてやこちらは年上の男だし、よくこんなに長い時間一緒にいてくれたものだ。
もっと彼女のことを知りたい。いろんなところに行って、美味しいものを食べて、笑って話したい。そんな気持ちがどんどん大きくなっていく。
──ああ、俺、前島さんのことが好きなんだな。
一目惚れが確信に変わる。おそらく俺にとっては数年ぶりの恋だ。
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