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「で、どうだったの?楽しかった?楽しかったよねぇ?」
「まな、落ち着いて……。なんでそんなに楽しそうなの」
「だって、さゆの恋バナなんて初めてじゃん。前の男はさゆの顔目当てのバカ男だったし」
まなは「あーやだ、思い出しただけで寒気がする。忘れよ」と苦々しい表情を浮かべた。ちなみに「バカ男」とは、わたしを「つまらない」と振った人のことである。
「買い物して、カフェ行って、ごはん食べたんだっけ?」
「うん……いろいろ付き合ってもらっちゃった。でも、また会おうって言ってくれたんだ」
昨日も少しメッセージのやり取りをして、「夏だし、今度はドライブでも」と誘ってくれた。
「いい感じじゃん。もしかして次は告白されちゃったりして」
「そ、それはないよ。古賀さん優しいから、また誘ってくれただけだと思うし……」
「何言ってんの。向こうは大人だよ?興味なかったらもう誘ってこないって」
男の人と二人でドライブなんて初めてだし、古賀さんと車の中に二人きり……そう思うとドキドキして嬉しくて、ベッドの上を転げ回ったりしたけれど、ふっと我に返ると思い出す。
わたしは大事なことを古賀さんにまだ伝えていない。
「……でも、実はわたし、まだ言えてなくて。ほんとは大学生だってこと」
「ええ?!まだ言ってないの?」
「言ってないの。あのね……」
わたしは、打ち明けられなかった理由をまなに小声で話し始めた。土曜日がどんなに楽しい一日だったか、も含めて。
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