#6 助手席の熱

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「わ……きれい」 「今日は晴れてるから、よく見えるね」 「はい。あ、あれテレビ塔かな」 古賀さんが連れてきてくれたのは、市街地から少し離れた山の上にある夜景スポットだった。同じように夜景を見に来ているのか、車が5、6台停まっている。 「古賀さん、素敵なところ知ってるんですね」 「大学時代にね、友達に教えてもらって。俺も大学は市内だったから」 古賀さんはそう言って、「そうだ。紗友里ちゃん、これ」と思い出したようにカバンから何かを取り出した。 「さっきのお店で紗友里ちゃんが見てたやつ。何個かあったけど、これが一番似合うと思って」 小さな包みから古賀さんが取り出したのは……ピアス。暗くてよく見えないけど、小さなハート形のようだ。 「よかったら使って。気に入ってくれたらいいんだけど」 「あ、ありがとう……ございます……」 ──古賀さん、いつの間に……。わたしがピアス見てたの、知ってたんだ。 思いがけないプレゼントがすごく嬉しくて、胸がじんわりと熱くなる。 「あの、すっごく嬉しいです。ありがとうございます、本当に……」 しどろもどろになりながらお礼を言うと、古賀さんに「紗友里ちゃん、落ち着いて」と笑われてしまった。 「安物なんだから、気にしないで」 古賀さんが微笑みながら、わたしの頭をポンポンと優しく撫でてくれた。そして──。 「──紗友里ちゃん、さっき、一緒にいたいって言ってくれて嬉しかったよ」 わたしの目をまっすぐ見つめながら、そう言ってくれた。
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