12454人が本棚に入れています
本棚に追加
/339ページ
#2 はじめてのデート、そして
待ち合わせ場所は、お互い使っている路線がちょうど交わる地下鉄の駅の改札口にした。
約束は午後1時だったけれど、支度に時間がかかってしまって、到着したのは1時5分前だった。
──遅くなっちゃった。古賀さん、もう来てるかな。
「前島さん?」
ふと後ろから声をかけられて、一瞬深呼吸をしてから振り向く。……古賀さんの、声だ。
「こんにちは……あの、遅くなってしまってすみません」
「いやいや、俺もさっき来たところだから」
古賀さんは、黒っぽいシャツの袖を軽く捲り、下はジーンズというシンプルな服装だった。
落ち着いててかっこいいな。やっぱりわたしたちみたいな大学生とは雰囲気が違う。ワイシャツ姿もすてきだったけど、私服もかっこいい。
心臓がバクバクと音を立てている。何か話したいけど、声を出そうとすると心臓が口から飛び出そう。
──落ち着け、わたし。今日のために新しい服も買ったし、いつもと少し違うメイクにも挑戦した。古賀さんに見てもらわないと意味がないでしょ。
「あの……どこ、行きますか?」
やっとの思いで顔を上げて、きちんと古賀さんの顔を見る。古賀さんは笑って、「うん、どこ行こうか。前島さん、何か見たいものある?」と言ってくれた。
最初のコメントを投稿しよう!