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#3 こんな偶然って
「さゆーっ、デート、どうだった?!」
「わっ、まな?!びっくりした」
「さゆから直接聞こうと思って、ずっとメッセージ送るの我慢してたんだよ。1講目、自習だったよね?サボって学食行こ?はい、決まり!」
月曜日の朝、地下鉄の駅から大学に向かう途中。親友の神原まなに後ろから声を掛けられた。
「もう、まなってば……」
「えー、だって早く聞きたいもん。年上サラリーマンとのデートの話」
「デートなんかじゃ……ただ一緒に買い物したり、カフェに行ったり、ご飯食べたり、しただけで……」
「世間ではそれをデートって言うんですー。さゆ、残念だけど墓穴掘ってる」
まながそう言ってケラケラ笑う。まぁ、来週から夏休みだし……一コマくらいサボっても大丈夫、かな。
神原まなは、大学に入ってから出会ったわたしの親友だ。
やわらかいミルクティー色の、ゆるくパーマをあてた髪。まつげはいつもくりんとしていて、つやつやのピンクレッドのリップを施している。メイクを手抜きしているところなんて見たことがない。
可愛くていつも明るくて、友達も多い。タイプの違うわたしとまなだけど、同じ学科で授業も重なることが多く、よく話すようになって仲良くなった。
まなは、わたしの名前の紗友里をもじって「さゆ」と呼ぶ。そんなふうに呼んでもらえるのは初めてで、その可愛い呼び方をわたしはとても気に入っている。
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