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「都合の悪いところは、俺が消しておいてやるとして。」
ウカさんが、お客さんの額を、ちょんと指でつつく。
それだけでどうにかなるんだから、やはり宇迦之御魂神様、さすがだ。
「泉実の包丁、あれは大事なものだよねえ。どうしたもんかなあ。」
ウカさんにしみじみと言われ、俺はあまりの運の悪さに肩を落とした。
発端は、人間のお客さんが久々に来店してくれたことにあった。
「いやぁ、海外出張から戻ってきて、日本の味が恋しくてねえ!」
そう言いながら、既にべろんべろんに酔っていたどこかのサラリーマンは、カウンターの一番真ん中にどかりと座った。
カウンター席は、全部で7席。
一番奥は、よほどのことがない限り、ミハイさんの定位置だ。
そして、今夜はウカさんが来店とほぼ同時に来てくれていた。
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