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他にも俺たちを案内したい場所があるらしく、天神様が先を促した。
なのに、急に騒がしくなった吸血鬼が一人。
「泉実!泉実!これだ!ここでともに写真を撮ろう!」
ミハイさんが、急に興奮し出して、俺を手招きした。
そこにあるのは、樹齢数百年とも千年以上とも思える大きな樹だった。
「あー、夫婦樟(めおとぐす)か。」
「めお、はいっ?」
「何でもパワースポットとかって言う人間もいるらしいよ。背の高い樹と低い樹が寄り添っているように見えるんだろう。記念に夫婦や恋人同士で写真を撮っていく姿が見られるねえ。」
そんなとろこで、一緒に写真を撮ろうという吸血鬼。
何の意味があってそういうことを希望するんだろう。
あと、自分は写真に写らないってことを分かっているんだろうか。
「ミハイさん、写らないですよね?」
「そこは気合で!」
気合でどうにかなるってのか、吸血鬼。
だったら、気合で赤ワインだけじゃなく料理も食べられるようになって、うちの店の売り上げに貢献してくれ。
「えーと、天神様、ちなみにご利益ってかなりあります?」
「気の持ちよう。」
それって、そこで写真を撮るくらい仲がよければ、その後も円満ってことで、余計パワースポットだって噂になる、そういうことだろうか。
俺は、写真を謹んで辞退させてもらった。
何故だと騒ぐ吸血鬼。
いや、俺が何故だと聞きたい。
世の中、気合ではどうにもならないこともあるって分かってくれ。
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