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作法に則り俺がお参りをするのを待っていたらしく、道真公がこっちこっちと手招きをする。
背後は森のようになっている稲荷神社。
その横から裏手にかけて、また鳥居と石段が続いていた。
立て看板には、『奥の院』と書かれている。
そうか、そっちが・・・
またしても急な階段に、俺は汗をかいて息が切れる。
すたすたと上っていく道真公とミハイさんが羨ましい。
もう少し日ごろから運動をすべきだろうか。
そんなことを考えていると、やがて小さな石室が見えてきた。
「さあ、店主。入ってお参りを。」
入ったとしても二人くらい、できれば一人で入ったほうがいいくらいの広さの石室。
その中は灯りが灯っていて、奥に祭壇が見える。
あれは鏡だろうか。
お供え物のお酒と油揚げも見える。
自分も行くと主張するミハイさんに待っていてもらって、俺は一人で石室の中に入った。
何やらこの中だけ雰囲気が違う。
そう思っていると、一瞬周囲の空気がふわんと膨らんだ気がした。
「やあ、来たね、泉実。」
「ウカさん!」
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