居酒屋まるの包丁騒動記

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いつの間にかウカさんが目の前に現れていた。 狭いはずの小さな石室の空間に、何故かゆとりを感じる。 「俺の結界の中に入れたからね。ここは俺の領域だから。」 ちなみに、外ではミハイが大騒ぎで、天神が抑えてくれているんだよと、ウカさんが恐ろしいことを言う。 ミハイさん、きっと俺が石室に入った状態で、結界が張られて自分が入ることも俺が出ることも出来なくなっていることに気づいて、騒いでいるんだろうなあ。 道真公と喧嘩をしないといいんだが。 「みっちー、意外と面白いだろう?そんな真面目くんじゃなくて。」 みっちーって、もしかして道真公のことか。 さすがに畏れ多くてそんな呼び方は出来ない。 「そうですね。語り継がれている話では、真面目であまり融通が利かなくて、祟りなんかも凄そうで。」 「そうなんだよねえ。でも、ほら、元は人間じゃないか、いくら天神と呼ばれても、俺たちと違って高天原で骨休みが出来るわけでもない。だから、紙に書かれた学問も大事だけれど、新しいものを吸収するのもいいもんだよと、ここを訪れる人間と今回みたいに触れ合うことを勧めて実行してもらってきたんだ。その結果、1000年かけて割と柔軟な性格になってくれたって感じかな。」 時代は変われど、分かりにくいお堅い説明をしても、誰も理解してくれない。 だから、易しい話し方を覚えた。 自分が語りたいこと連れていきたい場所と、観光目的で参拝に訪れた人が知りたいこと行きたい場所とが違う場合、興味をなくされてしまう場合があるということも知った。 だから、相手の望みにも細やかな心配りが出来るようになった。 そんなところだろうか。
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