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御馳走さまでしたと帰っていくお客さんたち。
最後まで残ったのは、やはりミハイさんで。
「大丈夫ですか、ミハイさん。」
思った以上に痺れが残っていたらしく、代金を肩代わりさせた華原さんに文句は言えどそれ以上のことが出来なかった。
「おーのーれぇぇぇ・・・次に会ったら目にもの見せてくれるぞ、ミラめ。」
やめておけ、目にもの見せられるのはおまえだから。
光速の勢いでハイブランドのバッグとハイヒールが体にめり込むことになるから。
さすがに気の毒すぎるので、俺は奥からとっておきのワインを出してきて、新しいグラスに注いでやった。
そして自分用にもグラスに注ぐ。
「いろいろありましたが、九州に連れて行ってくれてありがとうございました。おかげで、天神様に会うことが出来ました。」
なので、この一杯は俺からのおごりで、他のお客さんたちには内緒でと言うと、ミハイさんの落ちかけていた肩がぐんとあがり、背筋が伸びた。
「な、内緒。」
一応、店なんで、店主が酒を特定の客に奢るっていうのはあんまりよくないだろうからなあ。
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