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隅田川を南に下り、言問橋をくぐる。
会社のオペレーション担当から電話がかかってきた。
コントロールグリップの通話ボタンを押す。
「佐々木君、済まない。ひとつ頼まれてくれないか」
待ってましたと言わんばかりに、甲高い声が用件を告げてきた。
「バッテリーの切れかかった小型が、門前仲町から永代通りを西に向かっている。永代橋の北側でホバリングさせておくので、回収してきてくれないか」
状況は切迫しているのだろう、かなり慌てているようだ。
「了解。そいつの識別コードを送ってください」
「いや、マジ助かる。そちらのナビに転送するから」
後部座席に座る教官の声がヘルメットの内側に響いた。
「バイトに頼り切ってるんじゃねえよ」
割れるような声で耳が痛くなる。
「人手不足なんだからよ。うちの部長のとこ行って、採用を増やせと言ってこい」
有人機乗員課の馬籠課長、通称「オッサン」だ。
オペレーション担当は黙ってしまった。
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