飛翔

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オッサンはあだ名のとおり、僕とは親子ほども年齢が離れている中年男だ。 祖父の古くからの友人で、初めて会ったのは10年以上も前になる。 いつの間にか、僕らは気の置けない友人どうしになっていた。 このところ忙しいせいか、オッサンはストレスをため込んでいるようだ。 「拓真(たくま)、わりいな。お前に頼むべきじゃない仕事をふたつも押し付けてよ」 通話を繋いだままで、聞こえよがしに僕に謝った。 「いいって。おかげでドローンに乗れるわけだし」 僕は大学生の頃にオッサンの勧めで、この空輸便会社で働き始めた。 わけあって、卒業しても正社員にならずにアルバイトとして働いている。 入社試験とセットの、身体検査を受けることが出来ないからだ。 小型ドローンの担当オペレーターは黙り込んだままでいる。 居心地の悪い沈黙が続く。 「オッサン、もういい? 電話切るよ」 「おう、切っちまえ」 僕は一方的に通話を終えた。
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