飛翔

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僕は自他ともに認める操縦の天才だ。 尻尾は僕の身体能力を大幅に向上させてくれている。 筋力や持久力は常人の少し上くらいだ。 平衡感覚(バランス)や反応速度などは、常人の域ををはるかに抜きん出ている。 残念なことに、スポーツ競技などの表舞台に出ることはできない。 活躍するどころか、学生の頃はずっと体育の授業を見学していた。 シッポの存在を秘密にしているからだ。 尻尾があると知られて、つらい目にあったこともある。 「手術で尻尾を取っちゃえば? ちょちょいとメスを入れるだけよ」 母にそう提案されたことがあったが、シッポを切り離すことなど考えられない。 ほかに取り柄がない僕の、他者との唯一の違いがシッポだった。 いわば個性だ。 僕が僕らしく在るために、無くてはならないものだ。 ドローンは両国橋に差し掛かりつつあった。
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