エピローグ「遂に、姉ちゃんと――」

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エピローグ「遂に、姉ちゃんと――」

 秀典の力強さに流されそうになり、熱いキスに酔って身を任せていた美夜だが、口が離れると、練習という目的を再認識するように言う。練習という言葉を強調する。 「好きって? 練習だよ! エッチするのも練習だからね」  美夜の口から離れた秀典は、体を少し下にずらして美夜の胸の谷間に満足そうに顔を埋めた。右手は美夜の胸を服の上から掴んで揉んでいる。 「分かっているよ。今は練習の相手が姉ちゃんだから、主語を姉ちゃんにして好きって言っただけで、実際は『姉ちゃん』の部分を女の子の名前にして言う」  本音で言った事を隠して、美夜が納得いくように練習だと秀典はいう。 「わかった。ちゃんと好きって女の子に言うのは大切だからそこは、今のようにキスの前にいうのはいい」 「いいなら、続けよう。先を……」  秀典は美夜の太ももに手を伸ばす。その瞬間、秀典を押しのけて美夜は起き上がる。 「まず何も言わず好きにさせて、童貞の秀典がどういう風にするか様子を見ていた。でも今までの部分は、とても及第点をあげられない。可哀想だけど」 「いや、ここで童貞とか言うなよ」  秀典の言葉は無視して美夜は、続けて話す。 「ベッドに寝ころがる前に、色々と雰囲気づくりの練習をしなくちゃいないんだけど、それはお昼ご飯を食べてから練習することにして、ベッドに寝転がったところからの練習を今からするんだけど、まず、細かいステップを飛び越して、がっつきすぎ。あんた、強姦魔の才能あるかも」 「ない!」 「いつもそうだけど、すぐにディープキスをするじゃない? さらに胸を大胆に触る。今日も揉みまくっていたけど、そんなにすぐ胸なんか普通は触らないよ。いつもブラを早く外しすぎ。おっぱいはそんなに直接、見たり触ったりしちゃ駄目。私は家族だから許容範囲だけれども、普通の女の子はひいちゃうよ」 「えっ? 家族だからって……。いつもそう思っていたのか?」 「そうだよ、ママのおっぱいを子供が触る感じだもんね、私達のは」 「……」  そういう美夜の言葉を本心だとは思えない。  秀典は練習にこだわる美夜をよくわかっている。そして、自分を異性として好きでない、見ていないという事も。でも、そうだとは分かるのだけれども、秀典に美夜は反応している、喘ぎ声をだす時がある。その美夜に期待する。俺を好きだからキスをしたり、体を触ると反応するのではないか? 人間なんて所詮は猿。血なんてわからない。血がつながっているかなんて体が分かるはずがない。好きな相手とする行為では本能から飛び出す欲求と快楽が勝つんだ。好みの異性が近くにいて、本能が求めるのだから。血がつながっているからなんて関係ない。たまたま近くに自分に最高の相手がいただけだ。そういう環境だっただけの事だ。 「秀典。最初から指導が入ります。覚悟しなさい」  きりっとした顔をした美夜が、秀典を見る。すぐに美夜を裸にして好きなようにやって、下半身をすっきりさせたい。そうすれば、美夜が言う細かいステップの練習を美夜が納得するまでやれるのに。その思いを秀典は言葉にできない。そういった場合の美夜の反応が分かるから。ここまで来て、美夜を怒らせてはいけない。それが一番大事だ。今日美夜と童貞を捨てる事が出来るのだから。黙って美夜に従えば、今日やれるんだ。ここで焦ると、それが水の泡になる。焦ってはいけない! 焦ってはいけない! と、秀典は一瞬も我慢ならない状況を打破するために、心の中で繰り返した。  美夜は、ベッドに仰向けに寝た。そして、 「『美夜ちゃん、好きだよ』と言って、キスした後から。ああ、そういえばキスだけど、この時点では舌を入れないで、口を合わせるだけ。十秒くらいにして。ケダモノのあんたには我慢するのが難しいだろうけど」  ケダモノのように無茶苦茶に美夜を犯してやりたい! と、秀典は思ったが、黙って従うという選択肢が今は最善であるのだと、拳を握って耐える。 「じゃあ、優しく服を脱がせて……」  寝転がって首をコロンと秀典の方へ向け、少し恥ずかしそうな表情で美夜が言う。秀典は息遣いが荒くなるのを抑えるように努力しながら、寝ている美夜に近づいて、太ももに手を置く。 「駄目!」 「なんだよ、まだ服に手も触れてないだろ?」 「まず上から。どうして女の子が一番警戒する場所の近くをすぐ触ろうとするの」 「すみません」  そこが一番興味あるからですとは言わずに、素直に謝る秀典だった。 「まずは上のボタンを外して」  美夜のワンピースの上半身に着いているボタンを五つ、できるだけ気を使いながら、外した。ワンピースの下にすぐ現れると、秀典が期待したブラジャーではなく、白いキャミソールが見えた。ワンピースの胸元のボタンを外しても美夜の肌はあまり見えなかった。キャミソールを脱がす必要がある。そのためには、ワンピースをまずは剥ぎとらなくてはならない。前が開いているワンピースの襟を持ち、背中へずりおろす。そうすると美夜が上半身を少し起こして布が滑りやすくしてくれた。それと同時に袖も自分で上手く抜いた。美夜の腰までワンピースの襟元が下がって来た時に、美夜がお尻を上げたので、ワンピースを美夜の下半身からするりと抜くことができた。  こんなに協力的な女の子っているかな? と秀典は思うが、秀典にとって今は今後の誰だかわからない女の子よりも、目の前の美夜である。キャミソール姿でベッドに寝ている美夜を、熱い目でじっと見つめる。  太ももまで隠しているキャミソールだったので、先ほど下から触って怒られた事を思い出し、キャミソールの肩紐に手をかけて、左右一本ずつ肩からおろす。そして、キャミソールを下へずらすと、やっと美夜のブラジャーが見えた。レースとリボンが沢山付いた白いブラジャーだった。そうすると美夜が、両手で胸を隠すように抱きしめる。 「嫌、私、怖い……」  堂に入った演技をしているなと秀典は感心する。練習に対する美夜の熱心さと、念密に練られたストーリーと演技力は見事なものだと。そのまま答えずに、ブラのホックを外したいので、秀典は手を美夜の背中に回すため、ベッドのマットと美夜の背中の間に手を入れようとした。その瞬間、美夜の平手打ちが飛んできた。 「なんだよっ」 「本番だったら、女の子が帰っているところよ。本当にあんたって駄目な子。練習がとっても必要な子ね」  美夜はそういうとキャミソールの肩に紐を戻し、起き上がった。 「私がお手本を見せてあげるから、秀はここに寝て」  秀典は、言う通りに仰向けに横になる。その秀典の傍に寄り、頬に優しく美夜は手を置いた。秀典を見つめて言う。 「秀ちゃん、好きだよ」  そしてキャミソール姿で体をかがませて胸の谷間を秀典に見せながら、顔を近づけ、キスをする。谷間にどきんとした秀典の口に十秒ほど自分の口を合わせて、顔を離すと、秀典のシャツのボタンを外しはじめた。秀典はドキドキする。この展開も悪くないと。シャツのボタンを外し終わり、シャツがはだけた状態でその下のタンクトップに触る。そして、タンクトップの裾をズボンから引っ張り出す。そして、下から手を入れる。少し手を入れてから、動きを止めて美夜は言う。 「ほら、セリフ」 「はっ?」 「さっきのセリフ」 「え?」 「『嫌、私、怖い……』よ」  美夜が積極的に動いている事に驚き、喜んでいた秀典は、ああ、そういう事だったんだと、納得する。 「私、怖い」 「嫌が抜けている」 「嫌、私、怖い」  秀典は棒読みだったが、美夜がドヤ顔で答える。 「大丈夫。優しくするから」  美夜は嬉しそうである。 「これよ、これ。わかった? もう一度やってみて」  秀典が起き上がり、キャミソール姿で美夜がまた仰向けに寝る。  キャミソールをずらしてブラを付けている胸が丸出しの状態にして、背中に手を忍ばせていく。そこであのセリフを言うと思ったが言わない。応用を聞かせているなと、秀典は勘づいた。あのセリフを言うタイミングには個人差があるだろう。それで美夜はあえて、タイミングをずらしているのだ。臨機応変な対応をすべく、今までも練習をしてきた。試されている。  秀典は、そのままブラのホックを外す。そして、ブラジャーを上にあげると、美夜の豊満な両胸が見えた。秀典の下半身は最大限に反応していた。しかし、「焦ってはいけない」と心中でその言葉を繰り返しながら、右手でそっと触る。まだ美夜は何も言わない。指を動かす。揉む。触っていないほうの胸に口をあてる。吸う。舐める。まだ、何も言わない。美夜の胸を好きにしながら、秀典は先ほど触って怒られたから我慢していた、美夜の下半身に手を伸ばす。太ももに手を置く。何も言われない。手を太ももから上に移動させる。美夜のパンツの感触が手に感じられた。秀典の手の甲にあたっていたキャミソールをまくり上げる。美夜のレースが沢山付いた白いパンツが見えた。美夜のパンツをはいた下半身をじっと見つめていると、 「嫌、私、怖い……」  ついに、あのセリフが来た。 「大丈夫。ゆっくりするから」  呼吸が荒くなるのを一生懸命我慢しながら言った。美夜は先ほど、「大丈夫。優しくするから」と言ったのだが、アレンジを少し加えてみた。 「それ、どうなのだろう?」 「えっ?」 「『優しくするから』と『ゆっくりするから』って、どっちがいいのだろう?」 「どっちでもいいんじゃないか?」 「でも、女の子を安心させるここぞという時の言葉だから、熟考が必要よ」 「じゃあ、優しくゆっくりするからとか、どっちも言えばいいんじゃない?」 「それ、ちょっと長くない? あんまり恰好よくない」 「じゃあ、それを二つ含んだこれはどう? 大丈夫、俺に任せて」 「あんたには任せられない。野獣だもの」 「それは、今は言うなよ。いいフレーズを考える時だろ。俺に任せろと言うのは駄目なんだな……」  胸とパンツを丸出しにして、秀典の手は美夜の何もつけていない胸を掴んでいる。その状態で早く先にことを進めたいと懇願しない男はいない。秀典は必死に考える。しかし、いい言葉が思いつかない。 「とりあえず、大丈夫があればいいんじゃないか? ここは大丈夫と、その後に続けて安心感を増す言葉を言うって事で。その言葉は、今すぐには思いつかないから、後で考えよう。大切な言葉だから即興で考えずに、じっくり時と場所を変えつつ熟考しよう」  早く続けたい、先に進みたいという事はまったく出さずに、いかに大切で考え抜くことが必要かを強調して言った。 「そうね。いい言葉が思いついたら、お互いに発表し合おう」  やった、と秀典は思い、美夜のパンツを脱がそうと手をかける。 「嫌、暗くして」  またかよ、女は本当にいちいちこういう風に度々嫌とか言ってくるのか? と、秀典はうんざりした。この回答はどうすればいいだろうと投げやりに思った。そこで思いついたのは、 「君をじっくり見たいんだ」  これは、本心だ。やっと拝める美夜のパンツの下を、明るい所でじっくりよく見たい。 「それ、いやらしい。落第点だ……。そもそも、電気は消すのか、消さないのか、消さないにしてもどの程度の照明の強さがいいのか、それは、このタイミングでなく、ベッドに入る前がいいのか、このタイミングがいいのか、また別のタイミングがいいのか、まだまだ考えることがいっぱいあるね。秀典、私のカバンからノートとペンを取ってきて。さっきの言葉も含めて、とりあえず今すぐ解決できそうな部分と二人で思いつく限りの事を書き出して考えてみよう。暗さはどのくらいがちょうどいいのか、ちょっと明るいバージョンとくらいバージョンを今からこの部屋で作ってみよう。夜と昼でもまた変わるし、これは実証実験が大変だわ。」  以前、美夜は、この練習を辛く険しいものになると言っていた。その意味がやっと分かったような気がした秀典だった。 「これは厳しい……。ベッドの上で姉ちゃんはほぼ裸なのに、寸止めで我慢させられる。かなりの忍耐力がないと我慢できない状態だ。男にとって一番辛い寸止めで照明の実験をする……。姉ちゃんが満足するまでこれをやり遂げないと、その先に進めない。確かに辛く険しく、過酷だな……。練習を頑張らなくては……、早く……。果たして、今日やれるのかな? 本番……」 (了)
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