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プロローグ「まずは、好きなようにしてみて――」
「姉ちゃん、嬉しいよ……、はあっ」
渋谷駅直結の高級ホテルの一室。七月の中頃で梅雨は明け、太陽は激しく光を放ち、外は三十度を超える暑さ。だが、部屋の中は空調が心地よく効いていて、居心地のいい涼しさを感じる温度を保っていた。大き目の高級家具が数点置いてあるが部屋が広いため存在感はなく、部屋の解放感を損ねる事はない。上品な装飾を施しており落ち着いた明るさがある部屋である。
クィーンサイズのベッドの上で姉である美夜(みや)に覆いかぶさり、右手で美夜の胸を鷲掴みにしながら耳たぶにキスをして、興奮した息を漏らしたのは、美夜の弟で今月十七回目の誕生日を迎える小松崎秀典(こまつざきひでのり)である。
美夜の耳たぶに口をあてるだけではもの足らず、美夜の耳たぶにしゃぶりつき、口の中に吸い込んでから自分の舌でじっくりと味わう。
秀典の息遣いは荒さを増す一方だが、美夜はされるがまんまの状態で、抵抗するのでもなく、また、興奮しているそぶりもみせず、自分の上に覆いかぶさる秀典の首に両手を回し優しく包み込んでいる。
秀典は美夜の耳たぶから口を離すと、美夜の上に覆いかぶさったまま顔を美夜の正面に近づけてくる。美夜の目をじっと見つめてから顔を近づけつつ、ゆっくりと瞼を閉じ、美夜の口に自分の口を合わせる。すぐに美夜の口の中に自分の舌を入れると、美夜が絡ませてくる。右手を美夜の後頭部へ回し、力を込めて美夜の顔を固定すると、さらに激しく美夜の口の中を舌で舐めまわす。一、二分ほどすると、口を少し離してお互いに舌を出し合って絡める。そしてまた、口を強く合わせてお互いの口の中を舐め合ったり、舌を激しく絡ませ合ったりする。それを何回も繰り返し、秀典が美夜との濃厚なキスに満足して口を離した。
秀典は美夜の首元に顔をうずめて、舌を這わせる。舌を這わせながら、美夜のたっぷりとボリュームのある胸を、両手でそれぞれがっしりと握り、ベッドに仰向けに寝ている美夜の両足の間に自分の片足を入れて、美夜の足を広げさせる。
「はあっ。はあっ。はぁ……」
秀典の興奮した息遣いが、ホテルの静かな一室に響き渡る。
「やっぱり、練習することにしてよかったわ。あんた、がっつきすぎ!」
冷静な美夜の言葉に、呼吸を荒くしながら首元に吸い付いていた秀典は、顔を上げて、美夜を見る。
「これって、ほんとにロマンチックじゃない! 女の子が嬉しいと思う雰囲気が全くない! 男がしたいようにしているだけの典型的なエッチの入り方よ! せっかくの高級ホテルのムードが台無し!」
上に乗っている秀典を右手で押しのけて、秀典の下から起き上がった美夜は、厳しい言葉を弟へ投げる。
「あんた、もし、練習せずに好きな女の子に今のような感じでエッチをしようとしていたら、大変な事になったよ。逃げられていたところだよ? 女の子は逃げ帰った後に、絶対、友達に話すからね? あんたとエッチしかかったこと。あんたが下手だったこと。欲望の赴くままに襲われたこと。それで、翌日からあんたは、本能のままに女を犯す獣として、悪い噂で埋め尽くされるのよ? その噂のせいで今までしてきた努力が水の泡になるところだったわ。よかった。本当によかった。今日、練習しようとして」
秀典は勢いよくまくしたてる美夜の肩を掴んで、再度押し倒そうとする。
「姉ちゃん、そんなのいいからさ。とりあえず、続きをさせてよ。これ以上我慢をするのは辛い……。姉ちゃんと本番をしたいんだ。一度やってから、話はゆっくり聞くからさ」
強い力で押してくる秀典の頬をパチンと軽く平手打ちして、秀典の力が弱まったところで、手を振り払ってベッドから降りる。
「練習よ! 練習っ! 初めからきちんと練習しなきゃダメじゃない!」
と、厳しい口調で言いながら勢いよく歩き出そうとする。その美夜の腕を掴んで、勢いよくベッドに倒す。美夜の両腕を上から押さえつけて身動きができないようにすると、秀典は、キスをした。美夜の口にまた舌を入れて自分の口を強く押し当てる。
「んー、んー! んっ」
強い力を込めている秀典の腕は振り払えないが、美夜はもがいて、口は何とかずらした。口は離れたが鼻と鼻が触れ合う距離で、秀典は美夜を真剣な顔で見つめた。
「頼むよ、姉ちゃん。姉ちゃんとやりたいんだ……。もう、我慢できない」
染めている訳ではないのに真っ黒でなく、茶色がかったほどよい栗毛色のさらさらの綺麗な髪。まつ毛が長く、ぱっちりとした黒目が大きな目の、母親譲りの整った顔。真っ直ぐに自分を見つめてくるそんな美男子の弟を近くで見つめて、男としてやっぱり、イケてるなと美夜は思う。女性のような繊細で綺麗なパーツを男に配置したのだが、それが上手く融合して男らしさの中に埋もれてしまわない。美しい顔だが、女っぽさは感じられない、男の特徴は損なっていない作りで、整った綺麗な顔の男という印象だ。女性が好きな男としての爽やかさを持つ端正な顔立ちの高校生。そんな弟が自分に迫ってくるのだから、いくら姉でも女としてドキドキするのは仕方ないと、秀典の目を見つめ返す。
「姉ちゃん、一度本番をやらせてくれたら、少し落ち着くからさ。それから、また、練習に付き合ってよ。まずは、エッチがしたい。最後までしたい……」
秀典は、腕に力をさらに込める。体の線は細いが運動で鍛えていて、決してなよなよしていないルックスの秀典に腕を力強く掴まれて、流される、受け入れてしまいそうになる。美夜は小声で言う。
「で、でも、練習が……」
「姉ちゃん、好きだよ」
秀典が、再び口を合わせてきた。美夜は自分の中に入ってくる秀典の舌に自分の舌を絡ませていった。
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