コロッケ

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「おーい! 蒼太〜! ここのコロッケめっちゃ美味そうだぜ!」 一ノ瀬大地(いちのせ だいち)が先を歩く、短髪の少年に駆け寄り肩を組もうとした。 その瞬間、少年に腕を取られ組み敷かれそうになった。 大地は咄嗟に脇腹に蹴りを入れ、距離を開ける。 「お前は何者だ」 隠していたホルスターを探りながら、蒼太と間違えられた少年は、尋常では無い殺気を纏い問いただした。 「そっ、相馬君……、何してるんですか?」 旭小夏(あさひこなつ)がふわふわの髪を揺らし、小首を傾げて見ている。手には、商店街の名物コロッケを大事そうに抱えていた。 「何でも無い。ちょっと絡まれただけだ」 相馬八雲(そうまやくも)は警戒を緩めずに小夏に答える。 「いや、違うんだ! 友達と良く似てたもんで間違えたんだよ」 大地は両手を挙げ、咄嗟に弁解する。 「大地、あんた何してんの〜?!」 黒木綾那(くろき あなや)が大きな黒い目をさらに大きくしている。その隣では事の発端となった峰山蒼太(みねやまそうた)が、本屋の袋をぶら下げて、口をあんぐりと開けている。 「ほら! あいつ、あいつとお前がそっくりだったから、間違えたんだよ。悪かったな」 大地が謝ると 「蒼太っちあんな殺気出せないよ」 と、綾那が笑った。 「いや、そうなんだけど、何かめっちゃ似てねー? この二人? そこのコロッケがめっちゃ美味そうだから、蒼太も食おうぜって誘おうとしたら、間違ってさ」 「ふふっ……あはははは!」 旭はお腹を抱えてふるふると震えていた。 「似てます! そっくりです! 良かったら、皆さんも家で一緒にコロッケ食べませんか? 家この近くなので」 いつものように沢山オマケしてもらったコロッケの入った紙袋を少し持ち上げると、小首を傾げる。ふわふわと天然のウェーブがかかった栗色の髪がくるんと揺れた。
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