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音の合間
きみは、いつだって僕のそばにいた
「遊ぼっ。」
子供のときも
「どう?元気にしてる?」
遠く離れてからも、ずっと
僕はきみと違って昔から、無表情で、平坦で、つまらない
感情がないって、からっぽだって、いじめられていたこともあった
「っ、」
「なにしてんの!大丈夫?」
それなのにきみは、情けなくうずくまる僕の前に立って、そばにいた
こんな僕に興味をもってくれたのは、きみだけだから
きみの前では、たとえ形だけでも普通でいたいと思うんだ
「私、泣くタイミングが変、って言われたの、どう思う?」
静まりかえった境内、震える声で、きみは言う
やっぱり、そうか
きみが帰ってくるのは、なにかあったとき、僕に直接、話したいことがあるとき
そして、話す前には、きまって子供にもどったみたいに、はしゃぐんだ
きみの話なら、いくらでも聞こう、きみが困ってるなら、助けたいとも思う
でもさ、どうして僕にそんなこと訊くの?
僕の答えなんて、もう、わかってるはずなのに
「ごめん、僕、泣いたことないから、わからないや」
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