雨の給湯室、上流の蛍

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 ゲンゴロウの言葉を飲み込んだ瞬間、胸底で小さな明かりが灯った気がした。それはとても小さくて頼りない光だけれど、私にとっては大きな意味を持つ明かりなのだ。  私は沢山失敗をして、周囲に迷惑をかけてきた。その後悔は消えないし、反省をしても終わりはない。けれど、ゲンゴロウの思考で見つめ直すのならば、私が仕事に対する姿勢を考えるきっかけとなった、大切な職場だったのだと思う。あの職場で沢山失敗をして、その経験を思い返しては落ち込むことがなければ、私はこんなに自分を見直す機会はなかっただろう。  私は飛び交う蛍達の発光が落ち着くまで、その光景をじっと眺めていた。私もこの蛍のように悩みを解決して、居場所を定めることが出来るだろうか。 (きっと、大丈夫。大丈夫……)  その胸底の光を絶やさないように、私はそっと自分に言い聞かせていた。
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