私は立ち直りたい

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 亡くなった和子が直ぐ側で微笑んでいるような気がして、私は振り向いた。そこには庭の木々がさわさわと葉を揺らすばかりで、人の気配は少しもない。もしかしたら、和子はずっとここにいるのかもしれない。骨は墓に納められ、仏壇にあるのは形だけの写真だとしても、亡くなった人は遺された人達の中で生き続けると言うから。  私は小さく息を吐く。仕事辞めて、自分を受け入れて貰えそうな場所としてここを選んだのに、これでは少しも休まらない。このままの気持ちで日々を過ごしては、ここに来た意味が失くなってしまう。私は退職で落ち込んだ気持ちを少しでも上向けるために、気分転換をすることを決めた。
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