魔女と小人と少女

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 和子の葬儀後、集まった親類は遺された平屋の対応に迫られた。閑静な田舎町とは言え、空き家は荒れるだけでなく犯罪の温床になり得るため放って置くことは出来ない。家守りが必要な状況だが、喪主を務めた私の父を含めた全ての親類が遠方に住んでいるため、管理が可能な者がいなかったのである。  この状況を打破したのが、和子の遺言だ。彼女は万が一の時は花子に家の管理を託すつもりでいたのである。花子のおっとりとした優しい人柄を親類は周知しており、遺族とは家族同然の付き合いだ。彼女なら信頼に足るとされ、以来、彼女がこの家に住んでいる。私は微笑みを絶やさない彼女を前に慎重に緑茶を一口流し込むと、勇気を出して尋ねた。 「私がここにいることは、花子さん以外に誰も知りませんよね」
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