私は立ち直りたい

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 ゲンゴロウの言いたいことは分かる。だが、私はシロと日常を楽しむほど癒やされる一方で「私は仕事を探しもせずに、何をやっているのだろう」と落ち込み、前職での仕事の失敗や、上司の叱責が蘇り胸が苦しくなるのだ。この状態を解決するためにも、私はこの家で役割を果たしているという安心感が欲しかった。でもそれはその場限りのもので、ゲンゴロウの言う通り根本からの解決にはならない。  なら私は、どうすれば良いのだろう。気分転換にシロと遊んでも、安らぐのはその時だけ。仕事をしていない不安は仕事を始めなければ解消されないが、仕事を始める勇気がない。もう、解決しようがない。  悩めば悩むほど、私は自分が働いていた時の姿を思い出す。悲しくて、やるせなくて、自分の価値を見いだせなくなるのだ。仕事はふるわず、やり直しばかりの日々。同じ部署の仲間には迷惑ばかりで、足手まとい。こんな時に和子がいれば、きっと私を励ましてくれた。柔らかくも凛としたとした声で「澄佳ちゃんなら大丈夫だよ」と言ってくれるはずだ。
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