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でも、祖母はいない。いないから私はここでどうすれば良いのか分からずもがいている。祖母がいないのは、寂しくて恋しい。いつも聞こえていたあの声が聞こえないのがこんなにも辛いなんて、いなくなって初めて知った。
(助けて、ばあちゃん)
その時、スラリと襖が開いた。縁側の木目を見つめていた私が驚いて顔を上げれば、そこには仕事で忙しなく駆け回っていた花子の姿がある。落ち着いた様子で仏間に入ると、私達の座る縁側まで足を運び、それから微笑んだ。
「ちょっと仕事が落ち着いたから帰ってきたわ。ずっと不在にしてごめんなさいね。これ、お客様からいただいたの」
花子はトランクケースを置くと、中からビニール袋を取り出した。大きなびわが沢山入っている。
「おお、美味そうじゃのう。お嬢さん、びわでも食べて元気を出すのじゃ」
「あら、澄佳ちゃんに何かあったの?」
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