私は立ち直りたい

46/47
176人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
「そんなに構える必要はないのよ。澄佳ちゃんはこの家でのんびりまったり過ごせば良いの。シロちゃんと遊びながらね。それが一番の休息で、悩みの解決になるから」 「でも、それじゃあ、私は」  シロと遊び続ければ、仕事をしていない負い目から、落ち込んでしまうだろう。花子はそんな私の思考を推測したのか、私の発言にやんわりと言葉を重ねる。 「それで、落ち込めば良いの。ああ、今は辛いんだって自分を認めて、休ませてあげれば良いのよ。それを繰り返していくうちに、悩みの原因に気がつくはずだから。つまり、前向きに落ち込むってことね」  私はその新しい価値観に、肩の力が抜けるのを感じた。「前向きに落ち込む」とは、そんな発想は今までなかった。落ち込むことは良くないことで、今すぐにでも解決しなければならない。そう思い、シロやゲンゴロウに相談し、前向きになる方法を探していた。けれど、どうやら花子によると、私はこのまま落ち込んでいても良いらしい。役割にこだわらず、たっぷり遊んで、気持ちが沈んだ時には「辛い」と言って、休んでも良い。無理をして、落ち込む心を前向きに変えようとしなくても良いというのは、私にとっては衝撃的な出来事で、けれど、私の中ではどこかピンと来ない気もした。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!