私は立ち直りたい

47/47
176人が本棚に入れています
本棚に追加
/223ページ
「この田舎町は、罪悪感が生まれるくらい、魅力がたっぷりな町だから。澄佳ちゃんにはその良さに触れて、暮らしを楽しんで、しっかり落ち込んで貰わないとね」  しっかり落ち込むとは、なんてネガティブな言葉なんだろう。けれど、どこか前向きに聞こえるのは、その言葉の本当の意味を教えて貰ったからなのかもしれない。 「さあ、話はここまでにして、びわを食べましょう。美味しいわよ」  その日、皆で食べたびわの味は、びっくりするほど甘くて、瑞々しくて、美味しくて、ほっぺたが落ちそうだった。その罪悪感たっぷりな味は、私の心を撫でてくれる。  頼りの祖母はいないけれど、今はこんなにも優しい仲間がいる。  頑張ろう。私は誰にも聞こえない声で、自分にそっと言い聞かせた。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!