ここは、心癒やす異界の庭

変われない、変わりたい

　シロのおかげでこの町のことが分かってきた。それは想像以上にこの町には何もないということだ。小さな町でも商店の一つはありそうだが、商業施設の需要は全て隣町に取られているようだ。田畑と民家の他には町工場が点在しており、この町の主な収入源は農業と精密機械の生産が主らしい。高齢化が進んではいるが、田舎暮らしに憧れて移住する者も一定数いるようで、町には小中学校もある。在校生は少ないが、広々とした校庭で体育の授業を受ける姿を見ることが出来る。

　思い返せば、学生の頃は悩みがありながらも、社会人ほど悩まなくて済んだように思う。決められた時間割の中で悪目立ちしないように気をつけながら、先生の指示に従って過ごす。そうすれば、何も考えずとも一年が過ぎ、進級することが出来た。学校は評価の基準が分かりやすく、学力が高い子や運動が得意な子、委員会やボランティア、部活などに尽力した子は評価が高い。内申点を上げたいのならば、教師が評価しやすい成績を残すように努力すれば良かった。