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成金風の大柄の男が品定めをするようにジロジロと体を見られて嫌になる。
舌舐めずりされて、ゾワッと鳥肌が立った。
腕を掴まれて逃げる選択肢を失ってしまった。
使い魔の子がうろうろと檻の中を回っていた。
キレやすいチビデブが舌打ちをして、檻に近付いていく。
さっき触っただけであんなに怒るほど大切にされていたんだ、手荒な真似はしないよね。
不安げに見ていたら、俺の不安は嫌なカタチで的中した。
「テメェが起きてると、商売しにくいんだよ!寝てろ!!」
ガンッと檻を蹴り飛ばして、大きな音を立てて檻が転がった。
バチバチと檻から電流が流れていて、またぬいぐるみのように動かなくてまるで死んでしまったように感じて血の気が引いた。
すぐに駆け寄ろうとするが、グッと腕を引かれて動きを止められる。
ナイフを俺の顔に近付けるその人物は人を殺した事がある犯罪者の顔で、少しでも俺が抵抗すれば殺されてしまう。
でもこのまま見てる事しか出来なくてされるがままなんて嫌だ!
目の前でナイフをちらつかせて俺に恐怖を与えていた。
でもゼロが来るのを待っていられない、早くあの子を病院に運ばなくては…
先生がいる場所まで戻れば、医者もいたから治せる筈だ。
俺がいなくなって騒ぎになってるかもしれないし、ここを抜け出して何処かに行けば誰かしら会えるだろう。
だからナイフを持つ男の腕を狙い、拳を突き出した。
手応えを感じた、小さく呻き声を上げて指先に力が入らずナイフが地面に落ちた。
男の腕を思いっきり前に引いて背負い投げした。
これならイケる、もう一人俺の腕を掴んでいる成金風の男をどうにかすれば使い魔の子を連れて逃げられる。
そう思っていた俺はとても甘かったのだとすぐに気付いた。
学校でいじめっ子を撃退出来たとしても、ここはそんな甘いところじゃない。
本気の犯罪者が目の前にいるんだ…生ぬるい攻撃じゃどうにかなるわけがない。
大きな銃声と共に足に広がる熱と痛みを感じながら、地面に倒れた。
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