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寒い場所から急に暖かなリビングにやってきたからか指先がひりひりと痺れる。
リビングでは院長先生や職員達と一緒にふざけながらリビングを飾り付けしている子供達がいた。
キッチンには中学生から高校生までの少女達が料理を作っている。
他の少年達は手伝う気がないのか大きなテレビでゲームを楽しんでいた。
俺はソファーにカバンを置いて院長先生のところに向かう。
「院長先生、俺も手伝う事ありませんか?」
「あら冬月くんおかえり、じゃあこれ持っててくれる?」
ふくよかな体の院長先生はシワだらけの顔を優しげに深めながら俺に電気コードを手渡した。
この電気コードを差し込めば立派なクリスマスツリーは街の外にあった大きなクリスマスツリーと同じ輝きを見せるだろう。
ひまわりの園のクリスマスパーティーがより華やかなものになるだろう。
そして準備もクリスマスの内、楽しみ…パーティーが始まった。
いつもより豪華な食事がテーブルに隙間なく埋められる。
食欲がそそられるとてもいいにおいが鼻孔を擽る。
皆好きなおかずに手を伸ばして、口いっぱいに頬張る。
俺も箸をからあげの山に伸ばす、こんがりときつね色の美味しそうなにおいがする。
からあげとかいつぶりだろうか、ひまわりの園は寄付金で運営しているから豪華な食事などは年に一度…クリスマスの日にしか食べられない。
何故なのかは分からない、ただクリスマスの日はなにか収入があるのかと思うほどに違う。
「メリークリスマス!」
大きな声が聞こえて玄関に続く廊下のドアに皆体ごと視線を向ける。
そこにいたのは真っ白な胸元まである髭に赤い服、子供達は目を輝かせて食事などそっちのけで椅子から慌てて降りて駆け寄る。
サンタクロースがやってきたとはしゃぐ子供達を微笑ましく見つめるサンタクロースはとっくに信じていない俺達。
大きな袋を重そうに床に置いて腰を叩いて、でも子供達には笑って応える院長先生の旦那さん。
今年で60歳ではなかっただろうか、大変だなと俺はサンタクロースの手伝いをしようとからあげを口の中に放り込み、椅子から降りた。
そわそわしていて落ち着きのない子供達を一列に並ばせる。
「俺、配りますよ」
「そうかい?悪いね、はっはっは!」
豪快に笑うサンタクロースに袋を受け取るとずっしりと重かった。
白い布で出来た袋の中身を覗くとそこには名前が書かれたシールが貼ってある包み紙が見えた。
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