第三章 黄色の森

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 沈黙する彼の横で、ルーテルが思慮深げに口を開く。 「そのカエンイモムシは、アリ人間が大切に守ってるから、傷付けるのはまずい、と?」 「カエンイモムシは、傷付くと臭腺を出して救難信号を出すのよ。すぐに兵隊アリが集まってきて、とんでもないことになるわよ」 「じゃあフリーデは何か考えがあるのか?」  エルドレッドがつい感情むき出しの口調で聞くと、フリーデは無言のまま、辺りの地面を見回した。  茶色の地表には、あの黒ずんだ炎の燃え跡と、ベニイロダイオウシジミの残骸が散乱している。  何かを探している様子の彼女だったが、すぐに地面の一点に目を留めた。  エルドレッドもフリーデの視線の先を追うと、灰色の繊毛に覆われた巨蝶の甲殻が落ちている。  どうやら腹部のものらしく、薄緑色の体液がべったりと残っている。  フリーデが、小走りに駆けだした。  その大皿にも似た巨蝶の一部を拾って戻った彼女は、エルドレッドにずいと差し出す。 「これを塗って」
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