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四
エルドレッドは、フリーデの言葉に耳を疑った。
「これ? これって、ベニイロダイオウシジミの内臓だろ?」
「そうよ。その内臓と体液を体に塗るのよ。全員ね」
フリーデが、さも当然そうな顔でうなずいた。
彼女が両手で抱える巨蝶の残骸からは、えもいわれぬ蒼い臭いが漂ってくる。
すり潰した野草に、腐りかけた豚肉を隠し味に煮立てたようで、吐き気さえ催させる、控えめだが強力に浸潤してくる悪臭だ。
エルドレッドの横では、ナナエが真っ青な顔で、口を押さえている。
きれい好きなナナエには、およそ受け容れがたい話に違いない。
しかしルーテルは冷静にうなずく。
「なるほど、我々から親の臭いがしていれば、幼虫も我々を侵入者とは見なさない、という訳か」
「それにニビイロオオアリたちも、ベニイロダイオウシジミの臭いがしていれば、幼虫だと思って攻撃してこないはずだわよ。こちらから攻撃しない限りはね」
「でも、見た目でバレちゃうんじゃないですか? もしかして」
もっともに響くナナエの疑問だが、フリーデが首を強く横に振る。
「ニビイロオオアリの視覚は貧弱だから、臭いが強く出ていれば、彼らの注意は逸らせるわよ」
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