第三章 黄色の森

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「なるほど、フリーデ君の言うことも、もっともか」  ふうむ、と息をついたルーテルは、二秒の思案をおいて顔を上げた。 「よろしい。それでは前衛はエルドレッド君と、灯りを持ったナナエ君で。真ん中をフリーデ君、しんがりの守りは私が務めよう。異論はないか?」  ナナエとフリーデがうなずいた。  二人の少女を前に、エルドレッドの胸中に迷いが浮かぶ。  ……しかし本当に、第二階魔術師に過ぎないナナエを前衛に立たせて大丈夫なのか?   不安がエルドレッドの胸中に薄く差したが、それ以上に湧き上がったのは、戦士としての自負だった。  この四人の連隊を力で支えるのは、戦士を務める自分だ。  何があっても、全員を守り抜き、任務を終えて生還してやる。  エルドレッドは、すぐ隣に立つナナエに視線を向けた。  彼女も、エルドレッドをじっと見上げている。  ナナエの澄んだ瞳の中に、強い決意と仄かな煌めきを見つけ、エルドレッドは小さくうなずいた。  そして足元で蒼く燃えるランタンを拾い上げると、ナナエにそっと差し出した。 「灯り、頼むよ」  ナナエも無言で深くうなずき、両手でランタンを受け取った。 「では決まりだ。隊列を組んでくれたまえ」
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