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ルーテルの指示を受け、ナナエ、フリーデ、それにエルドレッドは所定の配置に立つ。
それを見届けたルーテルが、逆三角形の隊列を組んだ三人の最後尾に付いた。
騎士の青い目は、蟻塚と化した古城を見据えている。
「では進軍を。行ってくれたまえ」
エルドレッド、それにナナエは同時にうなずくと、ゆっくりと歩き出した。
並んで目指す先は、黒々と口を開くあの出入口。
まかり間違えば、あの燃える粘液の直撃を食らうだろう。
微塵の恐怖もためらいもない、といえば嘘になるエルドレッドだったが、彼の足は止まらない。
ナナエもぴったり歩調を合わせてついて来る。
何となく安心すると同時に、言いようのない緊張が全身を覆う。
すぐにエルドレッドは、ついさっき覗き込んだ出入口の前に立った。
身を潜めるようにして盾を翳し、一瞬息を詰めて目をつぶった彼だった。
が、穴の奥はひっそりと静まり返っている。
あの燃える粘液が飛んでくる気配は窺えない。
……よかった。まずは安心だ。
ふと安堵の息をつき、エルドレッドは隣のナナエに視線を移した。
蒼く燃えるランタンを掲げた彼女の目は、睨むように漆黒の闇を凝視している。
その視線は必要以上に堅く、蒼白の唇も微かに震えているようだ。
魔術師とはいえ、一介の村娘に過ぎないナナエには、これが初めての“冒険”なのに違いない。
ナナエは、きっと怖いのだ。
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