第四章 ミルメクの城

3/43
73人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
「あれが蜜か? フリーデ」 「そうよ。女王アリの主食になる蜜だわね。女王アリの世話係の働きアリだわよ」  エルドレッドの小声の問いに、フリーデも囁きで答えた。  ルーテルもつぶやく。 「それなら、あのアリ人間の後を追えば、女王の所までたどり着けるな」  剣を握るエルドレッドの手に力が入る。  やがて四人の見ている前で作業を終えたアリ人間は、エルドレッドたちに気付いた様子もなく、尖頭アーチから出ていった。  アリ人間を追うべく、エルドレッドは勢いよく立ち上がった。  力の入った彼の両腕も勢いよく跳ね上がる。  同時に彼が握る剣の鋒が、意図せずして目の前の巨大な蛆虫の横腹を突いた。  その瞬間、半透明のぶよぶよした塊が、エルドレッドの目の前で大きく仰け反った。  しまった、と彼が思う間もなく、乳白色の巨大な肉の壁は、うねうねと大きく悶える。 「戦士ってバカね! 何で剣を収めておかないの!?」  フリーデの罵声が飛んだ。  が、もう遅い。カエンイモムシは四人に向かって頭部をもたげた。  ――粘液を吐く!――   咄嗟に盾を翳したエルドレッドに、再びフリーデの非難が浴びせられる。 「同属の真ん中で燃える粘液なんか吐かないわよ! 少しは考え……」
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!