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どこか曖昧に響く騎士の言葉を聞き、フリーデが皮肉めいた調子で小さく笑った。
さもおかしそうに、愛嬌いっぱいの笑みを浮かべつつ、彼女が歴戦の騎士を冷かす。
「あんたそうやって魔術結社中央会議を脅迫したわけ? 大した騎士さまだわね」
「確かに我々騎士は、本来なら“騎士の正義”において、全ての真実を明るみに出し、法に則った公平な裁きを下さなければならない」
ルーテルがエルドレッドに目を向けた。
騎士は憐れむような、それでいてどこか憧憬のようなものが漂う眼差しをエルドレッドに注ぎかけてくる。
「だが、万事においてそれが最善とは限らないし、ときには悲劇しか起こらないこともある。その悲劇を最大限回避するために、今回は“騎士の正義”よりも、“冒険者の情”に寄った結論を取った。そして、この“円満な解決”に異議を唱える者は、誰もいなかった。大公殿下も、魔術結社中央会議も、それに大法院でさえも、ね」
ルーテルは小さく吐息を入れた。
そして打って変わった明朗な笑顔で、連隊を見渡す。
「さて、難しい話はここまでだ。約束の報酬を渡そう」
騎士は円卓の下から布の袋をじゃらんと取り出すと、フリーデの前に置いた。
「フリーデ君の希望どおり、一年間の学費と生活費に相当する額を用意した。いいかな?」
「ありがとう! さすが騎士団。気前がいいわね!」
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