第七章 円満な解決

8/11
前へ
/300ページ
次へ
 フリーデが喜色満面に袋を受け取ると、ルーテルはナナエとセティの前にも、それぞれ小さな布袋を置く。 「少ないが、ナナエ君とセティ君にも謝礼を用意した。受け取ってくれたまえ」 「そんな、謝礼なんて僕が受け取るわけには……」  ためらうセティに、ルーテルは力を込めて言う。 「君も私の連隊の一員だよ。君の協力なくして、この案件は解決し得なかった。それに、生活の再建には元手が要る。婚礼を間近に控えていれば、なおのことだ。是非とも受け取ってほしい」  じっと目の前の袋を見つめるセティだったが、やがてこくりとうなずいた。 「分かりました。ありがとうございます」  遠慮深げな様子でセティが袋を受け取った。  笑顔でうなずくルーテルが、最後にエルドレッドに視線を戻す。 「さて、エルドレッド君の報酬だが、金貨三百枚を用意した」  そう言って、彼は布袋をエルドレッドの前にずっしりと置いた。 「えっ!? そんなに?」  エルドレッドは頓狂な声を上げた。  地精に取られた彼の財布には、一応は全財産の銅貨と銀貨が詰まってはいたものの、合わせて金貨十枚にもならなかっただろう。  それを考えれば、この金貨三百枚という金額は、何年分かの食費にも相当する破格の報酬と言える。  これまで手にしたことのない大金を前に、頭は真っ白の彼だった。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加