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フリーデが喜色満面に袋を受け取ると、ルーテルはナナエとセティの前にも、それぞれ小さな布袋を置く。
「少ないが、ナナエ君とセティ君にも謝礼を用意した。受け取ってくれたまえ」
「そんな、謝礼なんて僕が受け取るわけには……」
ためらうセティに、ルーテルは力を込めて言う。
「君も私の連隊の一員だよ。君の協力なくして、この案件は解決し得なかった。それに、生活の再建には元手が要る。婚礼を間近に控えていれば、なおのことだ。是非とも受け取ってほしい」
じっと目の前の袋を見つめるセティだったが、やがてこくりとうなずいた。
「分かりました。ありがとうございます」
遠慮深げな様子でセティが袋を受け取った。
笑顔でうなずくルーテルが、最後にエルドレッドに視線を戻す。
「さて、エルドレッド君の報酬だが、金貨三百枚を用意した」
そう言って、彼は布袋をエルドレッドの前にずっしりと置いた。
「えっ!? そんなに?」
エルドレッドは頓狂な声を上げた。
地精に取られた彼の財布には、一応は全財産の銅貨と銀貨が詰まってはいたものの、合わせて金貨十枚にもならなかっただろう。
それを考えれば、この金貨三百枚という金額は、何年分かの食費にも相当する破格の報酬と言える。
これまで手にしたことのない大金を前に、頭は真っ白の彼だった。
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