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しかしルーテルが、構うことなく話を続ける。
「この報酬をどう使うかは、エルドレッド君の自由だ。だがそれだけあれば、定住の足掛かりにはなるだろう。それから」
騎士は、袋の脇に一振りの古風な長剣を置いた。
革の鞘に納められた外見は実に質素で、エルドレッドが失った長剣とよく似ている。
「我々の依頼のために、君は丸腰になってしまった。この剣は、さる騎士が修行時代に使っていたもので、君に譲ってもいいそうだ。騎士団として、せめてそのくらいは責任を取らなくてはね」
「いいんですか? こんなものまで。それに、誰がそんな……」
戸惑いを顔と言葉に表わしたエルドレッドに、ルーテルは涼しい顔でうなずいて見せる。
「せっかくのご厚意だ。ここは詮索せずに受け取っておきたまえ」
椅子から立ち上がったエルドレッドは、おずおずと手に取った剣をすらりと抜き払った。
手入れの行き届いた両刃の刀身には、鋼鉄の銀河を思わせる縞模様がうっすらと浮かぶ。
脇からフリーデが驚きの声を上げた。
「凄い鋼じゃない! 普通の冒険者にはとても手が出ない、物凄く高価な剣だわよ」
「ずっと使っていなかったそうだから、気にしなくて大丈夫。さあ、戦士に戻りたまえ」
ルーテルがエルドレッドを促す。
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