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騎士の勧めるまま、エルドレッドは鞘に戻した剣をベルトに下げた。
今の今まで軽く浮付いていた左の腰に、剣の重みが実に心地いい。
しっくりと落ち着いた気分を久しぶりに味わい、エルドレッドの口許が自然と緩んでくる。
「嬉しそうですね、エルドレッドさん」
気が付くと、ナナエが彼の横顔をじっとのぞき込んでいた。
そのヘーゼルの瞳は、好意的なきらめきを宿している。
何となく照れくささを覚え、エルドレッドは髪をくしゃくしゃやりながら、椅子に腰を落とした。
そんなエルドレッドを微笑ましげに見ていたルーテルが、円卓を囲む四人を順に見回す。
「今日までずっと緊張を強いてしまって、本当に済まなかった。緊張も解けて、そろそろお腹も減っただろう?」
悪戯っぽくそう言って、ルーテルがパンッ、と高らかに手を打った。
同時に遊戯室の扉が開き、空腹を的確に衝く匂いとともに、料理が円卓へと運ばれてきた。
「わっ、すごいっ!」
目の前の料理を前に、歓喜の声を上げたのはナナエだった。
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