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薄切りにされた何種類ものチーズ。
しっとりと蒸した採れ立てのキノコ。
ハーブと玉ねぎの薫る、溶き卵のスープ。
それにたっぷりと脂肪が乗った、牛赤身の細切りロースト。
華美さはないが、素材を生かしたという点では、これ以上ないご馳走だ。
久々過ぎる豪勢な料理を前に、痛むほどの空腹を抱えたエルドレッド。
つい腰を浮かせた彼の裾が、フリーデにくいくいと引っ張られた
「落ち着きなさいよ、全く……! ほら、ルーテルが待ってるでしょ?」
ハッと顔を上げると、穏やかな苦笑を浮かべたルーテルが四人を見ていた。
エルドレッドが神妙な面持ちで腰を落ち着けると、騎士ルーテルはどこかしんみりとした口調で語り始めた。
「さて、トリツキタケもミルメクの城も、君たちの力を得て、全ての始末が付けられた。君たちへの報酬も渡し終え、あとは皆でこの最後の晩餐を平らげるだけだ」
悪戯っぽく、ふふっと笑った騎士が、大きなため息をついた。
満足そうな、それでいてどこか寂しげな息だ。
「……これで私の連隊は、全ての役割を終えた。今この時をもって、この連隊は解散する」
ルーテルの宣言が、エルドレッドの胸の奥にしみじみと染み入ってくる。
……何もかもが、これで終わった。
押し寄せる達成感の余韻に浸る彼の耳に、騎士の言葉が静かに響く。
「この連隊は、私が望みうる最高の連隊だった。これで君たちは、それぞれ元の生活に戻ることになるが、もし何か起こったときは、また君たちを呼びたいものだ。それまで、しばしの暇乞いを」
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