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「騎士団も、もう組織が硬直化し始めている。そろそろ新しい風が必要だ。だが、私たちにできるのは、君が騎士になる機会を提供することだけだよ。本当に騎士なれるかどうかは、君次第だ」
「ありがとう、ございます」
一言だけ礼を述べて、エルドレッドはうつむいた。
……いよいよ、本当に騎士への道が拓けようとしている。
だがそれなのに、何かが胸の奥にずっしりと痞えてくる。
複雑な思いを抱えて考えあぐねるエルドレッドに、騎士ルーテルがうなずいて見せた。
「分かるよ。騎士に叙任されれば、地位も財も、権力も手に入る。だが騎士になってしまえば、主君である大公殿下の命には、何をおいても従わなくてはならない。その意味で、これまでのような“冒険者”の自由は一切なくなる」
……そうだ。
騎士というのは、何をおいても、主君の命には絶対に従う。
その意味で、あのオクシオン卿もまた、騎士の鑑なのだ。
ルーテルの清明な笑みに、どこか厳しい陰が差す。
「だが、エルドレッド君もそこは承知していると、私は思っている。だから私は、ここで君の本気を試したい」
「俺の本気、ですか?」
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