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翌朝早く。
エルドレッドは夜明けとともに、七日間を過ごしたベッドを降りた。
閉ざされた窓の隙間から、朝の陽光と表通りの賑わいが洩れてくる。
彼がずっしりと重い金貨の袋をリュックサックに入れた時、部屋のドアがノックされた。
応対に立つ間もなく、ドアは当たり前のように開け放たれ、戸口に旅装の少女が姿を現わした。
「エルドレッド」
頑小人の少女フリーデは、ドアを後ろ手に閉じ、つかつかとエルドレッドに歩み寄ってくる。
あの大きなバックパックを背負い、いつでも発てる様子のフリーデは、エルドレッドの正面に立つと、丸眼鏡の奥から彼を見上げた。
いつもどおり、つんとした様子に振る舞ってはいるが、眼鏡の奥の鋼の瞳が潤んで映る。
「で、あんた、これからどうするの?」
そわそわと落ち着かない視線で、ぶっきらぼうに聞くフリーデ。
いきなり問われたエルドレッドだったが、リュックサックを背負いながら、はっきりと答える。
「ああ、俺はまた仕事を探して回るよ。もっと腕を磨かないと。」
「目指すんでしょ? 第五階戦士、“護士(フェンサー)”」
「あれ、何で知ってるんだ?」
ちょっぴり驚くエルドレッドだったが、フリーデはぷいとあらぬ方へ真っ赤な顔を向けた。
「あ、あんたのことだったら、もう何だって分かるんだから。何だって……」
「え? あ、いや、えーと……」
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