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つられて頬が熱くなるのを覚えたエルドレッド。
一瞬うつむきかけたエルドレッドの耳に、フリーデの微妙に震えた声が響く。
「あ、あたしも学院に戻って、もっと研究するわ。いつか必ず、自分の農場を持つんだから」
「ああ。フリーデなら、きっと大丈夫だ」
視線をフリーデに戻し、エルドレッドが力を込めて言葉をかけた。
すると彼女も、鋼色の視線をちらちらとエルドレッドに振る。
「よ、よかったら、あんたも一度あたしの街に落ち着かない? 学院では、辺境を探索する教授や研究者が、いつも護衛の冒険者を探してる。実戦にも仕事にも、きっと困らないわよ」
聞いておきながら、フリーデはエルドレッドが答えるよりも先に、早口で言う。
「で、でも、あんたの都合もあるから、あんたのいいときに、あたしを訪ねてよね。あたしなら、トレアノ学院の農学研究室にいつもいるから。いつでも、いつでもいいわよ」
フリーデは、小さな右の拳を軽く持ち上げて、エルドレッドに向けた。
「さよならは言わないからね。きっと来てくれるって信じてるから、エッド」
「えっ? 『エッド』?」
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