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ナナエがくすっと笑った。
「でも旅に疲れたら、いつでもわたしの村、西のハザリア村へ休みに来て下さいね。のんびりしたいい村だから、きっと気に入ると思います。何なら、そのまま居ついちゃってもいいですよお」
悪戯っぽく告げたナナエが、すっとエルドレッドから離れた次の瞬間、彼の頬に少女の唇がちゅっと触れた。
「えっ? あ……」
思わず口走る彼からすっと離れ、ナナエは寂しげな微笑とともに小さく手を振った。
そして無言のまま、マントの裾をふわりと翻し、義兄セティと一緒に廊下の先へと姿を消した。
ナナエにキスされた頬に指先を触れつつ、呆然と立ち尽くすエルドレッドだった。
しかしすぐに頭を軽く振ると、この宿の玄関へと歩き出した。
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