第二章 魔術師ナナエ

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「ちょうど『黄色の森』までの中間点くらいかな」  言いながら、ルーテルが辺りを見回した。  エルドレッドも、騎士の脇で視線を巡らす。  二人の前には、夜の帳が降りかけた小ぢんまりとした平原が横たわっている。  円形の狭い草原を壁のように囲む巨木の隙間には、さらに奥深い山林へと続く枝道が幾つも口を開く。  エルドレッドとルーテルは、その草原に踏み入った。  丈の低い草も、乾いた地面も、実に柔らかい。  エルドレッドの質素なブーツは、足跡を容易く草原に刻み込む。  よくよく足元を見れば、自分たちとは異なる何者かの足跡が、無数に残されている。  そして、その魚鱗を思わせる踏み痕の中心には、石の小さな炉がつましく腰を据えていた。  エルドレッドは、その簡素な炉に歩み寄った。  薄く煤を被った石の円い炉には、まだ真新しい小枝の燃え滓が残されている。 「ここは斥候が一晩明かした場所だよ」  黄昏に響いたルーテルの声を聞き、エルドレッドは顔を上げた。  この狭い草原をひと巡りしてきたのだろう。  騎士は城壁のように草原を取り囲む木立の方から、ゆっくりと歩み寄ってくる。 「斥候が目印を残してくれている。『黄色の森』は、あの小道の方だ。今のところ、予定どおりに行程を踏んでいる」
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