72人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
「ちょうど『黄色の森』までの中間点くらいかな」
言いながら、ルーテルが辺りを見回した。
エルドレッドも、騎士の脇で視線を巡らす。
二人の前には、夜の帳が降りかけた小ぢんまりとした平原が横たわっている。
円形の狭い草原を壁のように囲む巨木の隙間には、さらに奥深い山林へと続く枝道が幾つも口を開く。
エルドレッドとルーテルは、その草原に踏み入った。
丈の低い草も、乾いた地面も、実に柔らかい。
エルドレッドの質素なブーツは、足跡を容易く草原に刻み込む。
よくよく足元を見れば、自分たちとは異なる何者かの足跡が、無数に残されている。
そして、その魚鱗を思わせる踏み痕の中心には、石の小さな炉がつましく腰を据えていた。
エルドレッドは、その簡素な炉に歩み寄った。
薄く煤を被った石の円い炉には、まだ真新しい小枝の燃え滓が残されている。
「ここは斥候が一晩明かした場所だよ」
黄昏に響いたルーテルの声を聞き、エルドレッドは顔を上げた。
この狭い草原をひと巡りしてきたのだろう。
騎士は城壁のように草原を取り囲む木立の方から、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「斥候が目印を残してくれている。『黄色の森』は、あの小道の方だ。今のところ、予定どおりに行程を踏んでいる」
最初のコメントを投稿しよう!