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ルーテルがかさかさと開いた紙包みを見るなり、エルドレッドは思わず声を上げた。
「わっ、うまそう!」
同時に、これまで黙っていたエルドレッドの腹がぐるぐると鳴り、唾がとめどなく湧いてくる。
紙包みの中身は、大きな鳥のもも肉だった。
四本の骨付きもも肉は、飴色の照り返し見せつつ、微かな煙の匂いを漂わせる。
「ガチョウの燻製だよ。保存食で申し訳ないが、これで我慢してくれ」
「いや、もう全然。ああ、ありがとうございます!」
エルドレッドは感動と空腹とに打ち震える手で、ガチョウの燻製を受け取った。
そしてはやる心を抑えつつ、赤々と燃え上がった火に、燻製を炙りだす。
程なく燻製の肉はいい具合に焼き上がり、辺りに食欲を直撃する匂いが漂う。
陽はとっぷりと暮れ、辺りはもう夕闇に閉ざされている。
炉辺に落ち着いた二人は、こんがりと炙り上がったガチョウの燻製を手に取った。
「じゃあ、頂きます!」
言うが早いか、エルドレッドはほんのり湯気の立つもも肉に、かぶりついた。
香ばしい煙の匂いと濃厚な脂が、彼の疲れた舌と、全身に染み渡る。
物を言うのも忘れ、がつがつとガチョウをほお張るエルドレッドを見ながら、ルーテルは好意的に笑う。
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