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第三章 黄色の森
一
ぐっすりと眠り込むエルドレッドの頬に、突然何かひんやりしたものが触れた。
「うわっ!」
一声上げて飛び起きた彼の耳に、少女の悪戯な声が聞こえた。
「おはようございます、エルドレッドさん」
はっと目を開くと、彼の鼻先に少女の顔があった。
ぱちぱちと燃える炉辺の火を背景に、この少女、ナナエは屈託のない笑顔を浮かべている。
はあ、と大きな吐息をつきながら、エルドレッドはナナエに挨拶を返す。
「あ、ああ。おはよう、ナナエ」
エルドレッドは、おもむろに草の上から立ち上がった。
辺りはまだ暗く、夜明けまでにはまだかなり時間があるようだ。
今日二つ目の息をつき、彼は草の上にどっかりと腰を下ろした。
今、目の前にちょんとしゃがんだ少女ナナエは、興味ありそうな眼差しでエルドレッドを見つめてくる。
内心戸惑いつつ、エルドレッドもちらちら彼女の様子を覗う。
ナナエの肌つやはきれいで、顔色もいい。
きっとぐっすり眠れたのだろう。
エルドレッドは密かに安堵の息をついた。
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